ROLEX ロレックス/オイスター パーペチュアル エクスプローラーⅡ

ロレックス

高級腕時計ブランドの中で最も有名で、販売数が最も多い。エクスプローラー、サブマリーナー、GMTマスターII、コスモグラフ デイトナ、デイトジャスト、デイデイトなど、数多くのアイコンモデルを発表してきたウォッチメーカーとして知られている。これらは50年以上も前にリリースされたモデルだが、誕生以来、意匠がほとんど変わっていない。ドイツや日本では主にステンレススティールモデルが人気だが、他の国ではプレシャスメタルのモデルやダイヤモンドウォッチなど、より高価なモデルの人気も高い。ロレックスは搭載ムーブメントのすべてを自社製造しているが、常にさらなる改良を目指し、基礎研究に余念がない。ヘアスプリングの材料となる合金も独自に開発されたものである。

ロレックス/オイスター パーペチュアル エクスプローラーⅡ

新たな冒険へ
エクスプローラーIIの誕生50周年の2021年、ロレックスは新世代ムーブメントを採用し、控えめながらもデザインにわずかな変更を加えた。この時計は洞窟探検家や冒険家に何を提供できるだろうか。

オイスター パーペチュアル エクスプローラーⅡ
オイスター パーペチュアル エクスプローラーⅡ

エクスプローラーⅡの誕生から50年を迎えた2021年、新たなムーブメントを積んで登場した最新作。普遍的なデザインだが、細かな点がブラッシュアップされている。

 エクスプローラーII の記念モデルがどのような姿で登場するか、さまざまな憶測が飛び交っていた。ベゼルはセラミックス製になるだろうか? アニバーサリーモデルでよく見られるロレックスグリーンの針は採用されるだろうか? ケース径は変わるだろうか? 新世代モデルはこうした予想に反するものだった。外観上の変更はごくわずかで、時計愛好家であってもそのほとんどが、新旧モデルを並べて比較しなければブレスレット幅が広くなったことさえ認識できないほどである。

 つまり、期待は裏切られたということなのだろうか? いや、そうではない。意匠の普遍性こそ、ロレックス 偽物の成功と安定した価値を裏付けるものである。他のブランドでは人気の低迷しているモデルが数年ごとに別もののように刷新されることがよくあるが、ロレックスは人気が「白熱」しないモデルであっても意匠を大きく変えることはなく、かつテクニカルなアップデートを怠らない。エクスプローラーIIはロレックスのプロフェッショナルモデルの中でも、数年前までは時計店で買うことができるモデルだった。だが、その時代は終わった。新しくなった今回のモデルは、外観上はわずかなマイナーチェンジに留まったが、大きな人気を呼び起こした。今や、ロレックスのポートフォリオにおいて標準装備となっている新型ムーブメントだけが理由というわけでもなさそうだ。

探検に同行して50年

 では、1971年にさかのぼってみよう。この年、ロレックスはエクスプローラーIIを探検用の腕時計として発表した。24時間目盛り入りベゼルは、暗闇の中を何日も歩き続ける洞窟探検家や、太陽が沈まない夏の北極圏を遠征する冒険家をサポートすることを主な目的とした機能である。53年に発表され、アイコン的モデルとして今も作り続けられているエクスプローラーは日付とセカンドタイムゾーン表示を備えていないモデルで、これをプロフェッショナル仕様に進化させたのが「エクスプローラーII」である。

 エクスプローラーIIは、数多くの北極・南極探検に携行され、火山や洞窟の探検家たちが愛用した。初代モデルは先端の尖ったバー針、長方形のインデックス、オレンジ色の24時間針を備えていた。これに続いて1982年に発表された2代目モデルでは、24時間針が細くなり、また色もオレンジから赤に変わった。ラウンド型のインデックスによってロレックスらしさがより強まり、時針には有名なメルセデス針が採用された。黒文字盤とともに白文字盤も発売された。当時のキャリバー3085は同年、GMTマスターIIにも搭載されたが、このキャリバーでは時針と24時間針の操作を独立して行えるようになった。24時間針に影響を与えることなく時針の設定が可能になったことで利便性が大幅に向上した。

 誕生40周年の2011年に発表されたモデルでは、進化の第2章として初代モデルへのオマージュが色濃く表れている。コレクターの間では「オレンジ針」と呼ばれる24時間針が復活し、ケース径は40mmから42mmに拡大され、針やインデックスも大きくなった。

新しいディテールの数々

オイスター パーペチュアル エクスプローラーⅡ

実用的なイージーリンク(エクステンションリンク)を備えたオイスターロッククラスプは信頼性が高い。美しく、堅牢で使いやすく、快適に着用できる。

 今回検証する2021年発表の新世代エクスプローラーⅡの外観における最大の変更点は、プロポーションに一層、調和がもたらされたことである。ブレスレット幅は22㎜に広くなり、これに応じてラグがスリムになったことで、同じく幅の広くなったクラスプと相まって、直径42mmのケースとのバランスが良くなった。

 文字盤にはごくわずかな変更しか加えられていない。ホワイトゴールド製インデックスのアワーマーカーには、PVD(物理蒸着)によるマットブラックのコーティングが施され、マットブラックラッカーのホワイトゴールド製の針との相性が見事である。

 大きなインデックスと針は視認性に貢献している。とはいえ、テストした白文字盤のモデルよりも、黒文字盤の方が判読はしやすい。フラットなサファイアクリスタル製の風防に初めて内側から反射防止コーティングが施されたことには好感が持てる。暗所では、青みがかった光を放つ蓄光塗料の「クロマライト」ディスプレイが役に立つ。サイクロップレンズは時計を正面から見る場合に、日付を読み取りやすくしてくれる。

 傾斜を持たせ、サンブラッシュ仕上げが施されたステンレススティール製のベゼル、白文字盤、オレンジラッカーの24時間針など、意匠は全体的に素晴らしい。だが、モダンな印象を与える要素とロレックス特有の特徴、そして、エクスプローラーIIの歴史的な特徴の混合は、サブマリーナーやGMTマスターIIのような何十年も変わらないアイコンに比べるとやや統一感に欠ける感がある。とはいえ、ロレックスでは黒文字盤のスポーツモデルが多い中、白文字盤と42㎜のケース径は主流ではないが、興味深い選択肢である。

 文字盤に加えられた小さなディテールは、他のモデルではすでにおなじみの小さなロレックスの王冠マークが6時位置に記されるようになった点である。王冠マークは新世代ムーブメントが搭載されていることを示す。

オイスター パーペチュアル エクスプローラーⅡ

大きなインデックスと太い針は、視認性の向上に大きく貢献。表面に塗布されたクロマライトが、暗所で青みがかった光を放つ。

アップデートされたムーブメント

 現在では、旧型のキャリバー3187に代わり、新世代ムーブメント、キャリバー3285が搭載されている。これで、ミルガウスとエアキングを除くすべてのロレックスのプロフェッショナルモデルに新世代ムーブメントが採用されたことになる。ユーザーにとって最も大きなメリットは、パワーリザーブが約2日間から約3日間に延長されたことであろう。これは、クロナジーエスケープメントを搭載することで実現した。形状が改良されたガンギ車とアンクルは、モールディングと電鋳を組み合わせたLIGAプロセスで製造されている。一部がくり抜かれたフォルムによって軽量化され、エネルギーの伝達効率が向上している。また、素材にニッケル・リン合金が使用されていることで、エスケープメントが磁気の影響を受けにくいことが特徴である。さらに、新世代ムーブメントでは、ローターの軸受けにスライドベアリングではなくボールベアリングが採用されている。

 検証した時計を開けてみると、ローターのボールベアリングには7個ではなく27個のボールが使われており、ロレックスが公言せずともムーブメントの最適化を黙々と続けていることがよく分かる。ボールの数が増えたことでローターがスライドベアリングの時と同じように静かに動作するようになったのは、多くのロレックス・ファンにとってうれしいアップデートだろう。

オイスター パーペチュアル エクスプローラーⅡ

クロノメーター証明書を取得する新世代ムーブメント、キャリバー3285は約70時間のパワーリザーブを誇る。

 衝撃が加わっても正常位置に戻るように設計された自社製のパラフレックス ショック・アブソーバや、片持ちのテンプ受けに代わって採用された安定性の極めて高い両持ちのトラバーシングバランスブリッジ、ニオブとジルコニウムによる常磁性合金で作られた、ブレゲ式エンドカーブを備えるブルーパラクロム・ヘアスプリング、テンワの内側に配されたマイクロステラ・ナットで微調整を行うフリースプラングテンプなど、ロレックスのムーブメントならではの特徴はそのまま受け継がれている。専用の工具を使えば、ムーブメントを分解することなく微調整を行うことができる。ムーブメントのパーツにはサンバースト仕上げが施されているが、手彫りのエングレービングといった手の込んだ装飾は施されていない。

 ロレックスのムーブメントは、独立機関であるスイス公認クロノメーター検査協会(C.O.S.C.)からクロノメーター証明書を取得している。さまざまな温度条件や姿勢で検査され、高い精度が保証されているが、ロレックスはこれに加え、独自の検査を導入している。ケーシングした状態で日差がマイナス2秒/日からプラス2秒/日以内という厳しいものである。歩度測定器によるテストにおいて、今回検証した個体はこうした高い期待に応えてくれ、計算上の平均日差はマイナス0・3秒/日とごくわずかだった。平均日差は6つのすべての姿勢においてマイナス2秒/日からプラス3秒/日の間に収まっており、最大姿勢差は5秒だった。ただ、水平姿勢から垂直姿勢へ変化した際の平均振り角が°50落ちるというのはやや大きく感じられた。

 精度の点以外でも、ロレックスの厳しい品質基準を満たしており、加工はほぼ完璧である。ポリッシュとサテン仕上げが美しいケース、各リンクが遊びなく連結されたブレスレット、そして、プリントの精巧な文字盤など、すべてにおいてルーペでの厳しい観察にも堪えうる高い品質を備えている。

 ケースはロレックス独自のねじ込み式トゥインロックリュウズを備えており、水深100mまでの防水性能を備えている。普段使いには十分な防水性だが、探検用の時計としてはGMTマスターIIのように、より高い安全性や耐圧性を提供するトリプロックリュウズを備えて欲しかった。

 リュウズは、リュウズガードを備えているが簡単に解除することができる。リュウズのねじ込みを緩めた状態では香箱内のメインスプリングを巻き上げることができる。リュウズを1段目のポジションに引き出すと、時針を1時間刻みで合わせることができる。24時間針はそのままホームタイムを表示し続けるので、時針を独立して設定でき、別のタイムゾーンに移動する際に便利である。時針を日付が切り替わる午前零時を越えて移動させると、日付もジャンプして切り替わる。時針による日付合わせは針を進めても戻しても行うことができるので、本来の早送り機能付き日付表示とほぼ同じ速さで合わせることができる。そして2段目のポジションでは分針を動かすことができる。この時、分針に連動して24時間針と時針も動く。

 オイスターロッククラスプも操作が簡単で、セーフティーキャッチを指先で軽くはじくと持ち上がり、特許取得のスナップ式レバーが現れる。その縁を押すと、バネが内蔵されたレバーが外れ、堅牢なクラスプを開くことができる。クラスプに搭載されたイージーリンク(エクステンションリンク)はとても実用的で、ブレスレットの長さを約5㎜、簡単に延長してまた元に戻すことができる。

 エクスプローラーIIの税込み価格は94万4900円で、24時間目盛り入りベゼルを搭載したGMTマスターII(オイスタースチール製/オイスターブレスレット)の104万9400円よりも低い価格設定は適正だろう。

結論

 ロレックスは常に進化を追い求めるブランドである。したがって、意匠を大きく変えることはしない。だからこそ、新世代ムーブメントの搭載や、ケースとのバランスが良くなったブレスレットなど、ディテールをアップデートすることで、史上最高のエクスプローラーIIを生み出すことに成功したのではないだろうか。

オイスター パーペチュアル エクスプローラーⅡ

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